里山素材活用 イモムシ工作詳解
里山の自然素材でつくるイモムシの工作
里山の豊かな自然は、子供たちの創造力を刺激する素晴らしい素材の宝庫です。特に、道端や木々で見かける小さな命であるイモムシは、そのユニークな姿から子供たちの好奇心を引きつけます。本記事では、里山で採取できるどんぐりや木の枝などを活用し、様々な形のイモムシを作る工作をご紹介します。この活動は、子供たちが自然素材に触れる機会を提供するだけでなく、生き物の多様性や成長（変態）への興味を育むことにも繋がります。
必要な材料と道具
里山素材を中心に、ご家庭や学校に通常あるものを利用します。
- 主素材:
- どんぐり（クヌギ、コナラなど、帽子の有無は問いません）: イモムシの体節表現に複数個使用します。様々な大きさや形のものを集めると、多様なイモムシが作れます。
- 木の枝（細めのもの）: 体の軸や、触角・足などのパーツに使用します。曲がりや節のあるものも表情が出ます。
- 枯れ葉や落ち葉（硬すぎず、ある程度しっかりしたもの）: 体の装飾や、作品を置く台座に使用できます。
- 小さな木の実（カラスノエンドウのサヤ、センダンの実など）：目や口の表現に利用できます。
- 接着剤: 木工用接着剤が適しています。速乾性タイプやジェルタイプは作業効率が上がります。
- 道具:
- ハサミまたはニッパー: 枝を切る際に使用します。子供が使用する場合は、安全性の高い子供用ハサミを選び、枝の切断は可能な限り大人が行うなどの配慮が必要です。
- キリまたは千枚通し（任意）: どんぐりに穴を開けて枝を通す場合に利用します。大人 supervision の下、安全に注意して使用します。
- カッターナイフ（任意）: 枝の先端を整える場合などに使用します。使用は必ず大人が行い、子供の手の届かない場所で保管してください。
- ペンや油性マーカー: イモムシの顔を描く際に使用します。
- ボンドを使う際の台紙（新聞紙など）
- 濡れ布巾やウェットティッシュ（手を拭くため）
里山素材を使ったイモムシの作り方（基本）
シンプルな材料で、基本的なイモムシの形を作る手順です。
- 材料の準備: 集めてきたどんぐりは、虫食いがないか確認し、必要であれば数日天日干しをして乾燥させます。木の枝は、作りたいイモムシの長さに合わせて数本用意します。枯れ葉や木の実も使えるものを分けておきます。
- 体の軸を作る: 細めの木の枝を、イモムシの体の長さより少し長めに切ります。これが体の中心となる軸になります。
- 体節を作る: どんぐりの側面（縦方向）に、接着剤を少量つけます。手順2で用意した木の枝を軸にして、どんぐりを枝に沿って並べるように接着していきます。どんぐり同士を隙間なく並べることで、イモムシらしい体節感を表現できます。どんぐりの大きさや形をランダムに使うと、より自然な表情になります。
- 頭部をつける: 体節の先端に、一回り大きなどんぐりや、形のはっきりした木の実などを接着して頭部とします。
- 顔を描く/つける: 頭部になるどんぐりや木の実の平らな部分などに、ペンで目や口を描き入れます。小さな木の実や、細かく切った枝の先端などを接着して立体的な目や触角として表現することも可能です。
- 乾燥させる: 接着剤が完全に乾くまで、平らな場所で静かに置きます。乾く前に動かすと形が崩れることがあります。
指導・活用のポイント
小学校での指導を想定した際の留意点です。
- 導入: イモムシの写真や図鑑を見せ、様々な種類がいること、どのように育つのか（チョウやガになること）などを紹介すると、子供たちの興味を引き出せます。「どんなイモムシを作ってみたいかな？」と問いかけ、完成形を想像させることも大切です。
- 材料選び: 子供たち自身に里山（学校の敷地内や近隣の公園など、安全な場所）で材料を採取させる体験は、自然への親しみを育む貴重な機会です。採取の際は、植物を傷つけないように、落ちているものだけを集めるなどのマナーを指導してください。
- 製作過程: どんぐりを並べる作業は、集中力を養います。どんぐりの大きさや並べ方を変えることで、作品に個性を出すことができる点を伝え、自由に発想するよう促します。
- 共同作業: 大きなイモムシをグループで作るなど、協力して一つのものを作り上げる活動も有効です。
- 発表: 完成したイモムシについて、こだわった点や工夫した点などを発表する機会を設けると、自己肯定感や表現力を高めることができます。
安全上の注意
子供たちが安全に工作に取り組むために、以下の点に十分注意してください。
- 素材の採取: 里山での素材採取は、必ず大人が同行し、危険な場所（崖、深い水辺など）には近づかないように指導してください。毒性のある植物や触れると痒くなるものなどにも注意が必要です。
- 道具の使用: ハサミやニッパー、キリ、カッターナイフなどの刃物や尖った道具は、使用方法を丁寧に指導し、大人の監視下で使用させてください。特にカッターナイフは大人が使用し、子供には触らせないようにします。
- 接着剤: 木工用接着剤は比較的安全ですが、目に入ったり口に入れたりしないように注意が必要です。使用後はしっかりと蓋を閉め、子供の手の届かない場所に保管してください。
- 小さな部品: 小さな木の実や切った枝などを目や口に使用する場合、誤って口に入れてしまう危険性があります。特に低学年の児童には、小さな部品を口に運ばないよう繰り返し指導し、完成後も注意喚起をしてください。
材料調達のヒント・代替素材のアイデア
里山素材が身近にない場合や、特定の素材が大量に必要な場合の代替策です。
- 材料調達: どんぐりは秋に公園や神社、学校の敷地などで比較的容易に集められます。大量に必要な場合は、公園管理者や地域の森林組合などに相談してみるのも一つの方法です。木の枝や落ち葉は、清掃活動で集められたものを譲ってもらうことも考えられます。
- 代替素材:
- 体節: どんぐりの代わりに、乾燥させたソラマメやエンドウ豆のサヤ、トウモロコシの芯を輪切りにしたもの、毛糸を巻いた割り箸の輪切り、丸めた新聞紙などを利用できます。
- 頭部: 大きめの木の実（クルミ、マテバシイなど）、ペットボトルのキャップ、紙粘土で作った球などが代替になります。
- 軸: 割り箸やストローを芯にすることも可能です。
- 装飾: 色画用紙を細かく切ったもの、毛糸、ボタン、モールなども活用できます。
アレンジ・発展
基本の作り方を応用し、子供たちの創造性をさらに引き出すアイデアです。
- 色の表現: 自然の色合いを楽しむのも良いですが、アクリル絵の具やポスターカラーでどんぐりや枝に色を塗ることで、カラフルなイモムシを作ることができます。毒々しい色合いにしたり、図鑑で見たイモムシの色を再現したりするのも面白いでしょう。
- 多様な形態: どんぐりの大きさや形、並べ方を工夫することで、細長いイモムシ、ずんぐりしたイモムシなど、様々な体型のイモムシを表現できます。複数の枝を組み合わせたり、針金を通して曲げたりすることで、動きのあるポーズのイモムシを作ることも可能です（針金の扱いは安全に配慮）。
- 背景や環境: 枯れ葉や小枝、土台となる板などにイモムシを接着し、里山の風景を模したジオラマ風の作品に発展させることができます。葉っぱを食む様子や、枝にぶら下がる様子などを表現するのも良いでしょう。
- 成長の表現: イモムシだけでなく、サナギ（繭をどんぐりや木の実、枝で表現）やチョウ（落ち葉や木の実で羽を作る）も合わせて作ることで、生き物の変態という生命のサイクルを学ぶ教材としても活用できます。
まとめ
里山の自然素材を使ったイモムシ作りは、子供たちが身近な自然に触れ、その素材の温かさや質感を感じながら創作を楽しむことができる活動です。どんぐりや枝といったシンプルな素材から、子供たちの自由な発想で多様なイモムシが生まれる過程は、見守る大人にとっても発見と喜びがあります。安全に十分配慮し、材料調達の工夫やアレンジを取り入れながら、この工作が子供たちの豊かな学びと創造性の育成に繋がることを願っております。